2011年3月11日の東日本大震災(地震名:東北地方太平洋沖地震)から、今年で15年という月日が経とうとしています。15年の間に、熊本地震や能登半島地震など大きな地震もありました。災害や防災に対する様々な制度や技術の変化などもありました。大きな被害があった被災地域では復興や高台移転などが進んで様変わりし、海は穏やかに打ち寄せて震災などなかったような時間が流れています。
しかし、今後想定される南海トラフ地震や首都直下地震といった次なる脅威は、いつか起きる日に向けて、確実にカウントダウンを進めて近づいていることも現実です。東日本大震災という巨大な地震災害の記憶を風化させず、当時得られた教訓を現代の、そして未来の防災・減災へと確実に繋げていくための重要なチェックポイントです。
あの日の揺れ、津波の恐ろしさ、そしてその後の避難生活での苦難。私たちは多くのことを学びましたが、同時に、新たな課題も浮き彫りになってきています。今回は、東日本大震災から15年というこの時期にこそ再認識すべき、「地震自体による直接的な被害」と、現代の社会構造が抱える「備えの課題」があります。
東日本大震災や、その後に起きた多くの地震災害被災地を見て、その被害傾向について調査を進めてきた地盤災害の専門家としての視点から、現代社会が直面すべき「備えのアップデート」について解説いたします。
地震による被害の再認識:「住まい・立地による被害の現実」
東日本大震災や、その後に起きた大地震は、地震という現象がいかに私たちが暮らす宅地に、家屋に巨大な破壊力をもたらすかを、私たちに突きつけました。地震の被害は揺れによる家屋の損壊だけではありません。津波、地盤の変状や液状化、そして長周期地震動といった、様々な被害の種類があります。
そして、その被害は家屋が建つ立地や、その建物構造によって異なってくる面があります。それらのリスクを正しく理解することが、すべての備えの第一歩となります。被災地を実際に歩いて調査を重ねると、「被害を受ける家」と「無事だった家」には明確な違いがあることがわかります。地震の揺れやそれに伴う現象が、私たちの「住まい」と「立地」にどのような現実を突きつけるのか、改めて再認識する必要があります。
1. 耐震性:命を分ける絶対条件であり、地震防災の「カギ」
地震防災において、すべての根底にある最重要項目が「建物の耐震性」です。 どれほど立派な防災グッズを用意し、何週間分の水や食料を備蓄していても、地震の最初の激しい揺れで家屋が倒壊してしまえば、それらを役立てることすらできず、命を失う結果に直結します。
耐震性のない住宅の恐ろしさは、「避難をする間もなく一瞬で倒壊に巻き込まれる」ことです。巨大な地震の揺れは、避難行動をとることも難しいほどの揺れに見舞われます。とくに深夜に地震が発生した場合、無防備な就寝中にいきなり揺れに翻弄され、耐震性の低い家屋であれば重い屋根や柱の下敷きになりかねません。
家屋の損壊は、その家に住む個人の問題だけに留まりません。崩れた建物が隣地や通行人の上に倒れてしまうことや前面の道路をふさいでしまうと、近隣住民の津波からの避難経路を絶ってしまいます。さらに消防や救急などの緊急車両、そして物資や人員の輸送を妨げ、地域全体の救助・救援活動を麻痺させてしまうおそれもあります。
「津波が来る地域だから耐震性は後回しでいい」という声も聴きます。しかし、地域の避難や救助活動に影響を及ぼすことを考えると、決して「自分の家さえよければ」ではない問題があります。地域全体の命を守るためにも、ご自宅の耐震性の確認と補強は絶対に避けては通れない最優先課題なのです。

地震による木造住宅の被害は、その耐震基準によって大きく異なることが現状です。直下の活断層を原因とする地震であった熊本地震(益城町中心部)、能登半島地震における、木造住宅の悉皆調査による事例を紹介します。
いずれも1981年5月以前の旧耐震基準では最も被害が大きく、1981年以降の新耐震基準では倒壊・崩壊に至る建物が減少し、2000年6月以降の基準(2000年基準)では倒壊等の事例は激減します。2000年以降に建てられた住宅では地盤の問題や施工不良の影響もありますが、「耐震等級3」を取得した家では大破以上の被害がないことから、繰り返しの大地震を想定すると耐震等級3が推奨されます。
2. 立地リスク:地盤と地形がもたらす多様な災害メカニズム
建物の耐震性と同じくらい重要なのが、その建物が建っている「土地のリスク」を把握することです。いくら我が家の耐震性を強めて万全の備えをしても、立地によっては耐震性を上げるだけでは対応できない場合や、避難が必要になる場合もあります。以下に代表的な立地リスクを解説します。
-
津波: 津波は、東日本大震災で死者・行方不明となった方の大多数を占める原因となりました。海溝で起こる巨大な地震では大きな津波が襲来します。津波は浜に打ち寄せる波とは異なり、海面が上がった状態でがれきなどを巻き込んだまま陸域に押し寄せ、そして引いていくという現象です。文字通り「物理的な破壊力」が直接襲いかかってくる場所であり、「浸水区域に留まること」自体が致命傷になります。浸水が想定される地域では、(大)津波警報が発令された場合には速やかに避難することが必要になります。
特に寒冷地では、避難時に津波にまかれたり、避難先で暖が取れずに低体温症などになることも懸念されます。上着やブランケット等の防寒具なども含めた備えが重要です。津波からの避難は、原則徒歩でという自治体が多いです。避難する皆さんが車を使ってしまうと、渋滞が起きて逃げ切れないという事態も想定されます。津波避難の課題や事例は「津波避難、「車で逃げ」てはいけない…移動は「徒歩」、知っておくべき避難の原則」の記事も参照ください。

-
土砂災害:地震の揺れにより、がけ崩れを中心とした土砂災害が起きる場合があります。土砂災害(特別)警戒区域やその近辺、また指定外でも急な崖、斜面では、地震の揺れによって土砂災害が起きることも有ります。
津波のような時間差もなく、豪雨が想定される時のように事前の避難が難しいことが課題です。大きな揺れを感じたら崖から離れる。大地震後には土砂災害(特別)警戒区域やその近辺の場合は安全な場所に避難するなどが考えられます。
- 揺れやすい地盤:地震による建物の倒壊や損壊は、建物の耐震性能だけで決まるものではありません。「建物が建っている地盤の性質」が極めて重要な要素となります。 同じ耐震基準で建てられた家屋であっても、固い岩盤の上に建つ家と、柔らかい地盤の上に建つ家では、被害の程度に雲泥の差が生じました。軟らかい地盤は揺れを増幅させる「プリン」のような性質を持っています。同じ地震でも、硬い地盤であれば震度5強だったものが、軟弱な地盤では震度6弱、6強に大きくなってしまうようなこともあります。そうなると、より被害が発生しやすくなってしまいます。ご自宅の建物の強さを確認することはもちろんですが、「そもそも自分の家がどのような揺れやすい地盤の上に建っているのか」も大事なのです。能登半島地震では、輪島市街地で揺れやすい地盤の地域で多くの木造住宅被害があったというケースもあります。こちらの記事「令和6年能登半島地震から1年! 見えてきた3つの課題と教訓」でも紹介しています。揺れやすい地盤の地域の住宅では、耐震性の確保が急がれます。新築でも耐震等級3や制振ダンパーの装着などをお勧めします。

-
液状化現象: 地盤の液状化現象は、地下水が浅い(地表に近い)地域で、地盤に緩い砂の地盤の地域で発生しやすい傾向があります。埋立地や、昔川だった場所(旧河道)などはこの条件を満たすことが多く、液状化が起きやすい場所となります。液状化が発生すると、建物が不均等に沈み込んで傾く(不同沈下)だけでなく、地中の上下水道管やその家屋との接合部が損傷することがあります。
液状化が発生した地域では、家が倒壊していなくても、トイレが使えず、水が出ないという「ライフライン途絶」の深刻な事態が長期化します。また、液状化した地点では、砂や泥が噴出した後に地中に空洞ができ、後日になって舗装に穴が開いたり、路面が陥没したりする危険性もあるため、発災後の移動にも厳重な警戒が必要です。液状化に対する備えとしては「地盤の液状化とは?どこで起きるのか?対策や備えは?」の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。

液状化による被害のモデル図
-
盛土崩落(谷埋め盛土): 丘陵地を開発したニュータウンなどで問題となるのが、かつての谷を土で埋めた「盛土」の滑動崩落です。東日本大震災でも、仙台市内の造成地で盛土地の大きな被害がありました。見晴らしの良い高台であっても、地中にある「人工的な造成の歴史」を知らなければ防げない被害です。
-
木造住宅密集地域(木密地域): 古い木造住宅が密集している地域では、地震の揺れによる倒壊に加え、「火災の延焼」という極めて恐ろしい二次災害のリスクが跳ね上がります。消防車が入れない狭い路地も多く、街全体が危険に晒されることになります。とくに空気が乾燥した冬季に風が強い時期にあたっては、大きな被害も想定されます。
3. 屋内での安全確保:見落とされがちな「室内という凶器」
建物が倒壊しなくても、室内が安全とは限りません。大地震の際、すぐに救急車を呼んで病院にかかることは不可能です。被害が甚大場合には、迅速かつ十分な治療などが受けられない場合も想定されます。平時であれば問題ないような負傷でも、死亡や障害が残ってしまうようなことにもなりかねません。
近年発生した地震のけが人の割合のうち、およそ3割~5割ほどが、家具類の転倒・落下・移動が原因とされています。次に多いのはガラス類の破損によるものであり、これらの被害を抑えることが、地震による怪我を防ぐことに大きく影響します。
※グラフの数値の出典は「家具類の転倒・落下・移動防止対策ハンドブック(東京消防庁)」より
背の高い家具や大型家電については、固定の前に「配置の見直し」を考えてください。就寝するベッドや布団がある場所、またリビングや食卓など日常的に過ごすことが多い場所に倒れてこない配置が重要です。さらに、倒れた時にまたドアを塞いで出られなくなったり、避難経路をふさいでしまう場所にも、倒れてくる家具を置かないことが望ましいです。
ウォークインクローゼットやクローゼット内、家具部屋のような場所に家具を置いて生活空間と分けること、そもそも背の高い家具を持たないなども選択肢です。そのうえで、確実な固定を行うという順番が望ましいでしょう。ガラスの飛散防止フィルムの貼付は基本中の基本です。窓ガラスのほか、ガラス窓がある家具などでも対策が望ましいでしょう。
さらに、近年大都市で問題となっているのが、タワーマンションなどの超高層建築物における「長周期地震動」への対策です。 遠く離れた震源からのゆっくりとした大きな揺れがビルと共振し、高層階では数分間にわたって大きく揺れ続けます。固定していない家具はフロアを滑るように飛び交い、凶器に変わります。
エレベーターが自動停止し、電気が止まれば、高層階に取り残される「インフラ途絶」が発生します。上階ほど影響が大きくなる傾向があります。特に高層マンションにお住まいの方は、この特有の大きな揺れと孤立(簡単に昇降できない)を前提とした在宅避難環境の構築が強く望まれます。
第2章:被害を想定した「備えのアップデート」
前章で確認した「被害の現実」を踏まえ、私たちは過去の漠然とした防災から、より具体的で実践的な「備えのアップデート」へと意識を転換しなければなりません。
1. 危険があれば即避難!:命を守る「最優先行動」の明確化
災害時の行動原則は極めてシンプルです。「命に直接的な危険(難)が迫っているなら、何をおいても逃げる(避ける)」、すなわち「避難」に尽きます。地震時において最大にして最も被害を受ける可能性が高いリスクは、津波浸水でしょう。津波浸水のリスクがある地域にお住まいの方は、津波警報や大津波警報が出た場合には、高台や頑丈な建物の高い階などの津波避難場所に「即座に避難」することが最優先です。
次に、ご自宅が耐震性が低い家屋である場合や、損傷がある場合には避難が必要となる可能性が高くなるでしょう。火災の危険がある木造住宅密集地、土砂災害のおそれがある場所でも、いざという時に避難できる体制を整えておくことが望ましいです。

2. 「在宅避難」の促進:避難所の現実と、自宅をシェルター化する意義
現在の防災においてパラダイムシフトとも言えるのが「在宅避難の促進」です。 一昔前は「災害が起きたら、とりあえず指定避難所(学校の体育館など)へ行く」という認識が一般的でしたが、これはすでに通用しません。
首都圏などの人口密集地帯で大地震が起きれば、避難所はその全員を収容するキャパシティはありません。スペースも物資も足りなくなります。入れたとしても、プライバシーのない雑魚寝、不衛生なトイレ、感染症のリスク、また残念なことに性犯罪が繰り返されるなど、避難所生活は想像を絶する過酷な環境でもあります。
自宅が最新の耐震基準を満たしており、津波や土砂災害、火災延焼の危険がない(立地リスクが低い)のであれば、「慣れた我が家で暮らし続けること(在宅避難)」が最も安全で、心身の健康を保つ最良の選択となります。トイレは流せなくなったとしても自宅便器を使うことができ、いつもの慣れた寝床の布団で眠ることもできるでしょう。「安全な土地の強い住まいこそ最高の防災グッズ」なのです。
なお、建物として本当に地震に強い家とはどんな家でしょうか。立地のリスクが低い(または把握して対処ができる)、初期性能としての耐震性能が高いことに加え、その性能が雨漏りやシロアリの被害などによって損なわれていると、十分な耐震性能の維持ができなくなります。性能維持のための定期的なメンテナンスと補修が、家を長持ちさせて家族の命を守ることにもつながります。

我が家の備えを推進する際でも、在宅避難ができる可能性が高ければ、家をシェルターとして在宅前提の備えを手厚くしておくこともできるでしょう。逆に立地リスクが高い、住まいの耐震性が低いなど、避難が必要になる可能性が高ければ即座に避難できる準備を手厚く行うことが望まれます。
さらに、安全な自宅に留まることができる人が在宅避難を選択することで、真に避難所を必要としている人(家屋を失った方や要配慮者)のためにスペースを空け、避難所環境を改善することにも繋がります。このような「快適な在宅避難」を実現するための準備こそが、現代の防災の要なのです。
自分と家族の命、そして生活空間を守るための「自助」を徹底することが、結果的に家族の生存率を高めます。また、在宅避難できることで避難所に入らないことも、地域全体の防災力を高める「共助」の向上へと繋がります。自宅を安全なシェルターにできれば、本当に避難所を必要としている方(家屋を失った方や高齢者など)の環境も改善できるのです。
このような立地と住まいの耐震性を踏まえ、被災シナリオと避難可能性を想定した備えこそ、現代で求められる防災としてアップデート頂きたい内容です。

3. 公助に頼らない備え:「自分の命は自分で守る」意識への回帰
大災害が発生した直後、行政や自衛隊、消防などの「公助」はすぐには機能しません。道路は寸断され、通信は途絶し、いつもであればすぐに助けに来てくれる消防、救急も手が回らなくなります。頼りの自衛隊も、大災害の直後に、一人一人の命を守ってくれるという存在ではありません。
青森県東方沖地震の後、高市早苗首相の「自分の命は自分で守る」という言葉に多くの反応がありましたが、残念ながらこれは事実です。憲法に認められた「居住の自由」の裏側には、リスクがある立地や耐震性の低い家に住むことを規制されないという側面もあります。国や自治体は、生き延びた人を支援することはできても、亡くなった人の救助はできないのです。(生き延びた後の支援の過不足の議論は、地震直後の生存とは別に、震災(災害)関連死を防ぐという課題としてあるでしょう)。
大規模災害、とくに南海トラフ地震や首都直下地震クラスの災害では、当日はもちろんのこと、場所によっては数日間は外部からの救援や支援物資が届かない「空白の期間」が生じる可能性があります。 だからこそ、「自分の命は自分で守り、家族の生活は自分たちで維持する」という自助の徹底が不可欠です。
家庭によって被害も異なりますし、それによって停電が長引く、水道が長期間止まるなど、対処すべき項目も異なってきます。さらに、最も大事なのは赤ちゃんがいる、介護が必要な高齢者がいる、ペットがいるという家族構成やペットの有無・種類によって、必要となる物資を備えておくことが必要です。国や自治体が推奨する画一的な防災リストを漫然と揃えるのではなく、「我が家の独自の被害シナリオ」を想定し、最悪の場合にないと困る物資など(特に携帯トイレ、個別の常備薬やアレルギー対応食など)を意識して備えることが推進されなければなりません。
我が家は新築だから、マンションだから安心ではなく、どういった被害が想定されるかを考えて、最善の備えをすることが求められます。新しいマンションであれば倒壊等により住まいを失う可能性は低くとも、特に液状化リスクがある地域などでは、インフラ途絶というリスクが想定されます。水は確保できても、配管の損傷や周囲の下水道管の被害などでトイレが流せないこともあります。
エレベーターは停電や損傷で使えない場合もあります。地域全体に被害が及べば、想像以上にインフラ復旧が長引くことも想定されます。近隣の避難所は既に人であふれてマンションに住む人々まで受け入れることはできない可能性も高いでしょう。トイレは圧倒的に不足する場合や使えなくなることもあります。そうした際、我が家でどう生活していくか。とくにトイレの備えについては各家庭でも備えておくことをお勧めします。

4.あれから15年、なにが変わった?:各種ハザードマップ公開や警戒の仕組みが構築
東日本大震災以降、日本の防災システムも決して立ち止まっていたわけではありません。むしろ、被害を減らすという熱意と技術の進歩もあって、地震・津波観測網の充実や、ハザードマップや地震臨時情報などでも整備が進んでいます。
最も身近な変化は、各種ハザードマップの劇的な精度向上と公開です。現在では、スマートフォンから国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」などにアクセスすれば、洪水、土砂災害、津波などのリスクを、ご自宅のピンポイントの場所で誰でも簡単に確認できるようになりました。
また、海域における地震・津波観測網(S-netなど)が高密度に整備され、緊急地震速報や津波警報発表のスピードと正確性が格段に向上しています。さらに、次に懸念される巨大地震に向けて、異常な現象を観測した際にいち早く注意を呼びかける「南海トラフ地震臨時情報」、また「北海道・三陸沖後発地震注意情報」という新しい警戒の仕組みも運用が始まりました。
ただし、これらはいずれも地震がいつ起きるか「予知」するものではありません。いつ来るか分からない地震に対して、様々な情報を基に、必要な備えを行っておくことが大前提です。地震が起こってから「こんなはずでは」とならないように、緊急地震速報が鳴ったらどうするか、津波警報が発表されたらどう行動するか。最新の技術で1秒でも早く地震や津波の到達を知らせるような仕組みを活用して命を守るべく、家族で話し合っておきましょう。

5. 優先度を意識した備えを:体系化されていない防災への警鐘
現状の日本の地震防災における大きな問題点の一つは、「リスクを把握した備えが体系化されておらず、何を優先すべきかが曖昧になっていること」です。 テレビで「水と食料を備蓄しましょう」と聞けばスーパーに走り、次に「防災リュックが必要です」と聞けばそれを買うといった流れが現実です。
しかし、繰り返し記してきたように、その家に耐震性がなく、家具も固定されていなければ、せっかくの備蓄もリュックも瓦礫の下に埋もれてしまいます。 これからの防災は、明確な「優先順位」を持たなければなりません。まずは建物を倒壊させないこと。耐震化や立地のリスクを確認する事。これがすべての基本であり、最大の生死の分岐点になりかねない点です。
まずは「我が家の固有のリスク」を特定し、命に直結する根本的な部分から順に備えを行っていくことで、初めて実効性のある被害軽減(減災)が可能になるのです。建物倒壊を防ぎ、室内の怪我を防ぐことで怪我無く生存したのち、生き延びる備え、衛生環境を維持できる備えというステップを考えて欲しいと思います。どうか、以下の優先順位を参考にしてください。
-
第1優先:建物を倒壊させない(耐震化・立地の確認)
-
第2優先:室内で怪我をしない(家具の固定・ガラス飛散防止)
-
第3優先:生き延びるための物資(水・非常食・カセットコンロ)
-
第4優先:衛生環境の維持と情報収集(携帯トイレ・モバイルバッテリー・ラジオ)

次の15年へ。私たちにできる「家庭の備え」
東日本大震災からの15年は、自然の猛威に対する畏敬の念を忘れず、己の身を守る術をアップデートし続けるための期間です。では、今後、いや今日から私たちは何をすべきでしょうか。
-
立地、建物のリスクを知る
-
我が家のリスクに応じた「我が家のオーダーメイドの備え」
-
「公助」に頼らない「自助」を極めて命を守り、災害後の生活を守る
という点について、ぜひ意識する機会となれば幸いです。
東日本大震災から15年。私たちは悲しみを乗り越え、立ち上がってきました。しかし、地球の営みは止まることなく、次の地震へのエネルギーを溜め続けています。
災害は忘れた頃にやってくるのではありません。私たちが「自分だけは安全だという思い込み」に支配され、足元の現実から目を背けたその瞬間に、災害は牙を剥くのです。災害は忘れたころにやってくると言われますが、忘れないうちにやってくることも有ります。覚えがないのにやってくることもあります。
どうか、今日このコラムを読まれたことをきっかけに、立地と我が家のリスクを確認し、それに応じた備えを行い、大地震から命を守り、生活を守る意識と行動が、あなたとあなたの大切な人の命を守る最強の盾となります。
土地・建物のリスクを知りたい方は?

災害リスクレポート+専門家による電話コンサルティング
で、あなたの調べたい場所の災害リスクを完全サポート
- 災害と建物の専門家が具体的な被害を予想
- 最低限の対策や本格的な対策方法がわかる
- 災害対策の優先順位がはっきりわかる
国内唯一の個人向け災害リスク診断サービスです。
※全国対応可、一戸建て・マンション・アパート対応可
災害リスクカルテは、過去800件超の物件で発行しています。過去のまとめでは、約47.3%の物件で何らかの災害リスクが「高い」という結果となり、水害に関しては55%の物件で「浸水リスクがある」(道路冠水以上、床下浸水未満を超える可能性あり)という結果が得られています。
災害リスクとその備え方は、立地だけでなく建物の構造にもよります。戸建て住宅でも平屋なのか、2階建てなのか、また地震による倒壊リスクは築年数によっても大きく変わってきます。
レポートだけではない!建物の専門家による電話相談アドバイスも

既にお住まいになっているご自宅や実家のほか、購入や賃貸を考えている物件、投資物件の災害リスクや防災対策が気になる方におススメです。特に、ホームインスペクションを実施する際には、併せて災害への備えも確認しておくとよいでしょう。災害リスクカルテの提出はご依頼から概ね4日で発行が可能です(位置の特定・ご依頼の後)。不動産の契約前や、住宅のホームインスペクションと同じタイミングなど、お急ぎの方はまずは一度お問合せください。
■記事執筆者(災害リスクカルテ監修)
横山 芳春 博士(理学)
だいち災害リスク研究所所長・地盤災害ドクター地形と地質、地盤災害の専門家。災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。広島土砂災害、熊本地震、北海道胆振東部地震、山形県沖地震、逗子市土砂災害等では発生当日又は翌朝に現地入り。
現地またはスタジオから報道解説も対応(NHKスペシャル、ワールドビジネスサテライト等に出演)する地盤災害のプロフェッショナル。




